「損」か「得」か

 大体の人は損得勘定で動きます。損得勘定というのは「損」か「得」かを計算することを言います。

「法律を破ると警察に捕まって、罰金か刑務所に入れられてしまうから自分にとって損だ。だから、法律は守る。」
と言うのと同じように
「授業を沢山休んでしまうと、単位を落とすから自分にとって損。だから、学校は休まないで出席しないと。」
です。これをある人は損なことになるギリギリまで気付かない。ギリギリを通り越して損な状況になってから気付く人もいます。それでも気付かない人もいる。
今上げた例は「ルール」によって線引きされた中での損得です。ルールを破ると罰則があります。
では、次はどうですか?
「バイトで1分でも遅刻すると、30分間給料でないから損。遅刻ばかりしたらクビになるからもっと損。だから、バイトは遅刻しない。」
これは、「お金」がからむ損得勘定ですね。お金がないと生きていけないのでこれは死活問題です。
ではこれは?
「朝、学校を遅刻しても、授業に間に合えば良いから損なことはない。だから、遅刻はしてもいい。」
おそらく、学校の「ルール」としては遅刻は認められないですが、だからといって自分へのデメリットはあまり感じられない。「先生に指導される」というデメリットがあるかもしれませんが、指導も一定の効果しかない。「お金」もからんでいない。
遅刻をしてしまう人がなぜ減らないのかを、担任になってからずっと考えてきました。
僕が言えることは「遅刻をする人は多くの他者からの信頼を失う」ということです。これを、「損」ととらえることができるか。
遅刻が多い生徒に「大学の推薦書を書いて欲しい」と言われた時、教員はどう思うか。「推薦書なんてかけないよ」と思うでしょう。
遅刻が多い生徒に「応援団をやりたいんです」と言われた時、教員はどう思うか。「そんな生徒に任せられない」と思うでしょう。
遅刻が多い生徒に「明日からは遅刻しません」と言われた時、教員はどう思うか。「どうせまた遅刻する」と思うでしょう。
これは、「人の信頼」がからむ損得です。実は、生きていくのに「人の信頼」が一番大きな損得を生みます。

遅刻をすることは「損」です。信頼がどんどん失われます。人とのつながりが薄くなっていきます。
人とつながることは「得」です。助けてほしいときに助けてくれる。安心が生まれる。
これは、これからの人生に必ずついてまわる話です。人とのつながりは常に信頼から生まれます。
何が「損」で何が「得」か。そこにつきます。