公開シンポジウム「地方創生 大学の役割と可能性」

公開シンポジウム「地方創生 大学の役割と可能性」

主催:認定NPO法人ふるさと回帰支援センター


極点社会の到来

高校生の大学選び

地元の大学?首都圏の大学?


【あいさつ】

850近い自治体が消滅するかもしれない

2008年リーマンショックで若者が

2011.3.11では子育て世代の若い女性が

田舎暮らしを始めた

 

若者の田舎暮らしが増えてきている

Uターンの人たちが増え始めている

 


ーーー第1部 大学生によるグループディスカッションーーー

【映像】

中大4年 北海道出身 北海道庁就職

法大3年 島根県出身

岩手県立大学大学院 岩手県出身

東海大4年 千葉県出身

4名によるディスカッション

 

首都圏の大学に進学した理由

東京の大学に行けば、いろんな人に会える。いろんなところに行ける

岩手の大学はどうか?

東北の人が多い

 

大学に期待すること

地域に行けること。大学を中間に挟むと地域に入りやすい

地域と社会人を結ぶ役割

地域は信頼関係が必要。4年間でやろうと思っても、中々うまくいかない。大学が橋渡しになるのでは

 

地方創生における大学の役割

地方を知る機会がない。大学がもっと地方とつながること。情報がたりない。

大学と企業、大学と大学でつながってほしい

首都圏の学生は起業を考えている人が多い気がする 


大学は自由である

やる気のある学生もない学生も巻き込んで行きたい

大学側も学生に積極的であってほしい

大学はいろんなことを学べるの場だと思う

自由に学べる場

フォローが必要では


ーーー第1部 終了ーーー

 

【第1部の感想】

 4名の学生のディスカッション。根っこには「大学は就職するための手段」であるという考えが存在しているように感じます。これは仕方のないことですけどね。

 今の大学ありきの議論は大学のあり方に大きな変化をもたらすのだろうか…。大学は自由であり、様々な経験の場である。それは現状で間違いありません。しかし、大学でなくても中学や高校で出来ないでしょうか。

 地域をなんとかしよう。地方をなんとかしよう。その思いを持っている人は増えているのかもしれませんが、今の小中高レベルでももっとこの議論はされてもいいのかもしれない。そうでないと、間に合わないのでは?

「大学側も学生に積極的であってほしい」…問題意識を持っている学生に対して、何か支援するものがあっても良いと思います。大学が学生側に働きかける。その動きも大切かもしれません。しかし、大学だけを頼りにしなくても、今ならもっと様々なコミュニティとつながれると思います。ツールはいくらでもある。必要と感じた人がどんどん動き出せば、2割の人が共感して動きだし、その2割がどちらでもいい6割を引っ張る。基本的にはボトムアップ。何せ問題に直面するのは今の若者ですから。問題意識の共有は必要かもしれません。大学は一つの「環境」であってほしいです。 



ーーー第2部 パネルディスカッションーーー

大学進学による人口移動

流入超過の都道府県

東京 愛知 京都 大阪 福岡 宮城 神奈川 石川 滋賀 岡山

それ以外は流出超過


法大学長 田中優子氏

様々な人がいることが大切

その地域でずっと生活するひと、Uターンの人、Iターンの人などがいると地域が活性化する。

よそ者、若者、馬鹿者

東京で「常識にとらわれない人」を育成し、地方に返したい。

 

名古屋学院大学長 木船久雄氏

大学同士が学生を取り合う現状

大学だけで問題が解決できるとは思っていない

どういう高校生が残り、どういう高校生が出て行くか

同じ県内でも、名古屋に集中する

 

東海大学学長 山田清志氏

平塚キャンパス

半分以上が神奈川、東京の学生

付属高校でも地方キャンパスへの進学を進めるが中々進まない


岩手県立大学長 中村慶久氏

一旦出て行った子どもが戻りやすい地域づくり

県にとらわれない

県立大は地方に貢献しなければならない

建学17年目だが、状況は変わらない

大学を立てればいいという問題ではない

 

慶應義塾大学教授 片山善博氏

都会で勉強したあとUターン 

大学進学による人口移動について、県単位だけでなく、プロックごとにみないと。

 

石川県がなぜ流入超過なのか。面白い。ここにヒントが隠されているのでは?

石川県と岡山県は有楽町にある回帰センターにブースを置いている。

県が移住に前向きである 

移住の人気県になれるかどうか

 

地方創生の国の予算

7225億円

内文科省994億円

大学関連400億円

 

青森大学理事長 岡島成行氏

青森県の進学率低い

経済的に厳しいという家庭

今後の展望

薬学部がある大学は少ない

道南、秋田、青森に薬剤師の供給

 

県同士で学生同士を取り合ってもしょうがない

 

地方創生の人材が必要

教育や研究に重点を置かなければならない

地方創生の予算もよく見ないと怪しい

 

現場のニーズと合わない可能性がある。

国はニーズに合わないミスマッチな要求をしてくる

ありがたさがいまひとつ

率直な声をあげていかなければ

 

教育・研究の充実は長期計画

政府は短期的ではなく、長期的に事業を見てもらいたい

 

【映像】

青森大学の学生へインタビュー

青森大学の学生:東京に行きたいとは思わない


地元に残ろうと思っている人が多い

 

岩手県立大の学生も最近は残ろうとする人が増えている

東京に昔の憧れとは違った怖さを感じている

看護系、首都圏は待遇がいい。

首都圏が受験生確保に先手をうっているため、首都圏に取られてしまう


【映像】

NPO法人 いわてGINGA-NET

学生ボランティアから誕生

文科省の被災地支援

 

岩手県立大 復興girls&boys

学生にプロジェクトを組ませ、大学がサポートするという事業から誕生


活動費は大学より支援

東京への交通費などは?

財源を捻出しにくい

 

ふるさと納税

大学やNPOではなく、自治体にお金が渡ってしまう。見返り競争になってしまっている。

大学やNPOなどにお金が渡るべき

 

イニシャルコストを自治体が支援してくれるのはありがたい

 

名古屋学院大

NPOやプロジェクトは

学生の教育という位置づけ

教育プログラムとして

 

大学COC事業

地(知)の拠点整備事業

課題解決に資する様々な人材や情報・技術が集まる、地域コミュニティの中核的存在としての大学の機能強化を図ること。

 

【映像】

名古屋学院大の様子

大学生がつくるカフェ

カフェ経営のサークル→まちづくりを学ぶ場

 

商店街組合との連携

孤独死が多い

付き合いが薄い

 

家にこもりがちな老人をなんとかしたい

「あったかサロン」

自治副会長との連携

 

法政大

大学生に求める

課題解決能力

プロジェクトをたくさん作っている

学生もイキイキとしている

 

座学、書物のような出来上がった知識ではなく

今の社会の問題、課題を見つけるところから


必ず現地に行かせる。

帰ってくると目が輝いている

それから、自分の発見した課題に関する本を読むようになったりする

 

地元にあるものを活動して体験

そこから理論へ結びつける

 

【映像】

東海大学

テレビ会議でプロジェクトの成果発表

東海大学阿蘇キャンパス 援農体験

現場経験をもっと積んだ方がいい

湘南キャンパスチャレンジセンター(2006年設立)

40あるプロジェクト

2000人が参加

援農プロジェクト

除雪プロジェクト

科学教室プロジェクトなど

 

自分自身にできることを探せる

 

座学だけでは成長は難しい

社会人基礎力、学習力

 

大学ー大学の連携は可能か

大学の中でやることで手一杯

都市型大学と地方の大学がどう連携をとるか

大学内の問題でもある。

他大学の学部同士でつながる

 

自前のネットワークで実地で学ぶことを多様化することに東海大学は成功している

 

【映像】

学生インタビュー

北海道出身

地元だと学びたいものが学べないから東京にでてきた

地元に戻るのも一つ

 

宮城県出身

東京に出てきて感じたこと

人の違いを見ることができた

新しい可能性を感じるとができた

地元の良さを知ることができた

地元に貢献したい

 

富山県出身

仕事のやりがいは自分で見つけていく

地元の就職活動の現状、就職口が少ないが志願者も少ない


沖縄県出身

沖縄は親族とのつながりも多い

出産を考えると親が近くにいた方がいい

 

法政大の入試制度まちづくりチャレンジ入試

自治体が学生を推薦

海外の大学とはたくさん提携しているのに、日本ではほとんどない

 

岩手県立大

IT企業を集積するという事業、イノベーションセンター

 

なぜ、海外との連携が多いのか

海外に何を期待しているか

留学生を送る、外国語の習得が主

 

新しい視点

自治体連携

グローバル人材も重要だが

ローカル人材も重要

 

大学の多様性

 

雇用と地方創生の問題

 

【映像】

①法大のOB?

農家として生きて行くことを決意

きっかけは総務省の地域おこし協力隊

古民家再生

田植え

収穫

幸せを感じた

今も現地で活動を広げている

法大で学んだこと

教授も事務の人も現場へ出ることを後押ししてくれる


②多摩地域交流センター

地元の企業とタイアップ

化粧品開発の現場

地元の特産品

檜原村のヒノキで

 

学生:実践してみると、学問とは違っていることに気づいた

教授:大学は片足理論研究

もう片足自分の持っている力を共有する

若者の目線で地域をどうするかを考えていける

課題は?

モチベーションを高く維持することが難しい

企業との考え方の違い

企業と大学をつなぐコーディネーターが必要


大学が地域を知ってもらう努力

地方は特に 

 

地方は首都圏よりも起業する人が少ない。

チャレンジする人材、芽を育てる。

環境整備が必要

 

大学のガバナンス改革

 

教員 職員 地域 学生

学生…横とのつながり


木船

大学 学生 地域

COC

 

山田

大学がなんでもやってくれるのも問題

自治体が大学をどう使うかも考えていければ

 

中村

地方創生支援チーム設立

 

田中

スーパーグローバル大学

どこでもやっていける人材

海外だけではなく、ローカルでも生きていける

グローバルの能力も

ローカルの能力も同じ

 

片山

鳥取県で知事をやっていた

地域の知の拠点

質の高い、豊かな人材育成

これまでは地域との関わりがなかった

地域の課題の解決を研究対象にしてもらいたい

こう言った研究がメジャーになってもらいたい

ーーー第2部 終了ーーーー


【全体の感想】

 僕は「なぜローカル経済から日本は甦るのか」冨山和彦著(PHP新書)を読んでから、地方創生にも意識を持てるようになりました(僕の田舎も同じことが言えるはずなのに…今更です)。特に「今後日本は人類が経験したことのない人手不足に陥る」という言葉に大変な焦りを感じました。どうなってしまうのだろう…。そこから、今日のシンポジウムの参加に至りました。

 高校の教員目線での感想です。このシンポジウムは「大学に何ができるか」に主眼を置いているのですが、高校や中学でも同じことが言えると思います。これから必要なのは「学校や大学がもっと地域と密接な関係を持ち、地域の人は教育活動の支援を、学生は地域貢献をする。」ということです。学校や大学は学生(ここでは児童、生徒、大学生)にそのような活動をするきっかけや活動しやすい環境を提供する組織として存在していく。その中で、学生たちが体験的に今の社会に問題意識を持つようになる。

 大学の位置付けはその課題を「学問」として取り込むこと。どなたかがおっしゃっていた「地域の研究資源を自らの研究課題に取り入れる」ということでしょう。「研究も盛んにし、地域にも貢献できる大学」これは、教員の活動だけではどうにもできないものです。問題意識をもった学生が立ち上がらなければ。

 結局は、今の日本がもつ教育の課題につながります。「考える力」や「主体的な学び」、学生が必要とする力を現場で育む。学びは「課題の発見」から始まる。「教育の力」苫野一徳著(講談社現代新書)では学びの「個別化」「協働化」に加え「プロジェクト化」を提唱しています。プロジェクトを通じて、個々人に必要な力も、他者との折り合いのつけ方も学ぶことができる。そこに、地域の力が加われば最高ですね。現場での体験の価値をもっと知ってもらうべきかもしれません。

 地域の活性化には法政大の学長が言っていた「若者、よそ者、ばか者」が必要です(ばか者は「常識にとらわれない変わり者」のことです)。成功しているところは、この三者が揃っているそうです。あとは地域にそれを受け入れる体制があるかどうかですね。

  今回のシンポジウムは実例として各大学での取り組みと、学生の活動を沢山見ることが出来ました。既に動き出している学生が多くいることに驚きです。これが「敷居の高いもの」では、中々動き出せませんが、紹介していただいたものは決してそうではありませんでした。学生がこれまでの常識にとらわれずに、既存のものから新しい価値を見出している。ものが溢れ、便利な都会から、何もない不便な田舎に新しい価値を見出す。そうやって若者の価値観もかなり多様化してくるでしょうね。