スウェーデンの投票率はなぜ高いのか?

以下のサイトの記事を読みました。簡単にまとめます。

公益財団法人 明るい選挙推進協会 http://www.akaruisenkyo.or.jp/citizenship/

因みにこの団体はもともと総務省の所轄にあったものだそうです。総務省のHPを見るとその位置付けが分かります。ご興味のある方はどうぞ。私が読んだ記事はこの協会の広報誌「私たちの広場」に掲載されていたもののようです。

 

私たちの広場306-311号「スウェーデンのシティズンシップ教育」放送大学教授  宮本みち子

スウェーデンのシティズンシップ教育について書かれたこの記事はとても参考になります。お時間のある方は是非読んでいただきたいです。一読の価値はあると思います。

 

記事は全部で6回分で、以下のような目次です。

第1回 社会に生きることが〈政治〉

 スウェーデンのシチズンシップ教育とスウェーデン社会が子どもに対してどのようなマインドをもっているかを紹介しています。ここだけ読んでもかなり勉強になります。


第2回 青少年に民主主義を伝える スウェーデンの若者政策

 スウェーデンのシチズンシップ教育の歴史的背景と時代の変化を見取りどのような政策がなされたかを中心に紹介しています。日本は遅れてるなぁ…と感じます。


第3回 子どもと若者の声を聞く ―青少年行動計画を作る

 青少年の社会への参画を進めるために何に重点が置かれ、どのように進められたかここではヨンショーピンという自治体(コミューン)が行った具体的な政策の流れが書かれています。青年行動計画はとにかく子どもの声を聞くところから始まりました。


第4回 青少年が街をつくる

 ヨンショーピンの取り組みの具体例が書かれています。都市再開発に子どもも意見し、子どもたちにとって快適な駅舎をデザインするというものです。地方創生にも大いに関係してくることだと思います。


第5回 学校は民主主義を学ぶ場

 ヨンショーピンの学校で行われている民主主義の教育について紹介しています。授業における学習だけでなく、学校のシステムそのものが民主主義を育むという意図で成り立っています。学校運営の知識やスキルを学ぶ「生徒のための民主主義」は大変興味深いです。


最終回 若者の手で、若者のために

 全国青少年協議会( LSU)というNGOの取り組みについて書かれています。若者の影響力を無にしないために30歳までの青少年が運営している組織です。日本にもきっとあるのだろけど(古い組織として)、生きていませんね。


まずは、地域と連携して小さなコミュニティーから。あとは、何しろ学校が民主主義を育む場として機能していないのが大問題です。「地方創生」だってこの切り口でかなり行けると思うのですが。全部つながりますね。はい。


以下、とりあえずグッときたところをそのまま引用しました。これだと、よく分からないですかね。

私はこの記事に今の日本が抱える問題を解決するヒントがいっぱい隠れていると感じます

だから、できるだけ早く、多くの人に読んでもらいたい。2006年の記事のようですが、考え方は全く古くないし、この記事はこれから活きてくるものと信じています。

 

以下引用

 

"「 社 会 は 人 々 の た め に あ る 」、 そ し て 「 人 々 が 社 会 を つ く っ て い る の だ 」 と い う 認 識 が 人 々 に 共 有 さ れ て い る こ と に 、 ス ウ ェ ー デ ン の 大 き な 特 徴 が あ り ま す "


" 国 家 に 対 す る 人 々 の 信 頼 は 高 く 、 国 家 と 社 会 を 持 続 し て い く た め に 青 少 年 ・ 若 者 を 育 て て い く 必 要 が あ る と い う 意 志 が 人 々 に 共 有 さ れ て い る と 思 い ま す 。"

 

" ス ウ ェ ー デ ン 社 会 が青 少 年 を 信 頼 し な が ら 、 彼 ら / 彼 女 ら に 伝 え た い と 願 っ て い る こ と が 具 体 的 に わ か る 気 が し ま す 。 "

 

" 生徒たち に、社会は自分たちの手で変革できるものな のだということを教えていることです。"

 

" それと関係しますが、貧しい家庭環境に育 った者も、犯罪を犯した者も、自分の能力に自信がない者も、無気力な状態にある者も、 今の状況を克服して建設的に生きることができるのだということを、繰り返しメッセージとして伝え、あなたが困難に打ち勝つために、 社会には様々な支援が用意されていることも教えています。 "

 

" 日本と比較するとスウェーデンの若者の投票率はかなり高いのですが、その背景には、 幼少の頃から社会の中で能動的に生きることが重視され、大人たちが青少年の発言に耳を傾け、その声を社会に反映させようとする意識、制度、環境があるのです。 "


” 1986年、若者の中から青年大臣が任命 され、若者に関連する諸問題に対する特別の 責任を与えられました。1989年、全国青 年委員会は若者の参加と影響力を高めるため にはどうしたらよいかを検討する任務を負い ました。この会議が提出した最終報告書は、 若者の意思決定への参加を進め、社会に対する影響力を高めるためにあらゆる領域でやるべき膨大な提案をしています。なかでも重要な課題として、次の3点を指摘しています。

 1つ目は、さまざまな政策上の意思決定をするにあたって若者の意向を反映させるために、若者が政策の策定にもっと容易にアクセスできるような環境を整備することと、若者が理解しやすいように政策をもっと明確に示すことでした。

 2つ目は、政策上の意思決定を若者にとって身近な地域レベルで行うことが、若者の意思決定への参画には重要であるという点でした。

 3つ目は、人々が社会について考え行動するには、細分化されたセクタ ーをやめることが必要であり、ものごとを総 合的視野で考えるために、意思決定の分権化を進めることが必要だという点でした。”

 

" 1999年にはユースレ ポートが公表されました。このユースレポー トには、3つの大目標が掲げられています。

第1の目標は若者の自立を実現することで、 青年期の到達目標とされています。第2の目標は、現在および将来において若者がメンバーとして社会に参画することで、具体的には、 若者が発言する機会を持ち、決定に参画する ようになる(影響力を持つ)ことで、これが 社会の目標として定められています。若者が社会に参加するとは、若者が社会に適応するということではありません影響を与えるチャンスもない、名ばかりの参加であってはならないと指摘されているのです。第3の目標は、若者の参加、創造性、批判的思考力を社会は資源として生かすことです。"

 

" 青少年行動計画のコンセプトは、子どもや若者を社会の一員として位置づけ、彼ら/彼女らに積極的に発言させ、その声を吸い上げる努力をすることです。このような取り組みによって、社会の一員としての自覚と自信を 高めることができるようになるのです。こうして、社会の一員としての経験を積むことに よって、「社会は自分たちが作るもの」という精神を体得し、大人になった時、市民としての振る舞いができるようになるのです。"

 

ところで、子どもや若者の参画を進めるにあたって、大人たちが肝に銘じることがある といわれています。彼ら/彼女らの声をただ聞き置くだけで、実効性がなければ、若者は 大人のうそを見抜いて遠ざかってしまいま す。逆に、発言したことが実現するという経 験をすることで、その後も発言し行動するこ とに関心を持続し、社会に参画しようという 意欲となるのだというのです。"

また続きを書こうと思います。


" 大人に意見を求めるのとは違って、子どもや若者と対話するには、大人に力量が求 められます。もし、「子どもに判断する力などないのだ」という先入観をもって接すれば、 子どもはそれを敏感に感じ取ってしまいます。意思決定への参画を促すためには、若者たちに情報を与えることが重要であることも 忘れてはなりません。"

 

” 青少年が、自分が暮らしている街に愛着を 持ち、住みやすい街にしていこうと主体的にかかわっていくことは、社会を作る重要な営みです。ヨンショーピンでは、青少年行動計 画に基づいて、街作りに子どもや若者を参画させる取り組みが続いています。地元の主人公は青少年ですから、どのような町が住みよい町なのかは、青少年が一番よくわかっているからです。 "


" 青少年は、自分たちが発言したことが、その後の話し合いや交渉を経て受け入れられ、 環境が整備されていくことを体験することによって、民主主義というものを体得するのです。このような幼少期を経て、一人前の社会人へと成長していくのだと思います。 "


" スウェーデンの学校教育法には、学校民主主義の思想が明確に条文になっています。たとえば、「生徒は自分たちの教育のありかたに影響を与えることができる」「教師はすべての生徒が学習の仕方、教育形態、授業の内容に対して、実際に影響力を持つように監督しなければならない」「授業はそれぞれの生徒の能力と必要に応じたものでなければならない」「教師は生徒とともに授業の評価を行う」などの条項が学校民主主義を進めるための指針となっています。 "


” 高 校 生 が 学 校 民 主 主 義 の 理 念 に の っ と っ て 学 校 運 営 に 参 画 す る こ と は 、 生 徒 に と っ て も 大 変 な こ と で す 。 生 徒 を 支 援 す る 条 件 が な け れ ば 、 責 任 の 重 さ に つ ぶ れ て し ま う 生 徒 が い な い と も 限 り ま せ ん 。 ま た 、 生 徒 の 実 力 が 追 い つ か ず 、 学 校 民 主 主 義 と は 名 ば か り と な っ て し ま う で し ょ う 。 そ う な ら な い た め の 条 件 の 一 つ は 、 生 徒 た ち の 取 り 組 み を 支 援 す る 「 学 校 オ ン ブ ズ マ ン 」 で す 。 "


" 生 徒 が 学 校 運 営 を す る た め の 知 識 や ス キ ル を 学 ぶ 「 生 徒 の た め の 民 主 主 義 」 と い う 選 択 授 業 が 開 講 さ れ て い ま す 。 特 に 、 生 徒 会 役 員 を や る 生 徒 は 受 講 し て ほ し い 科 目 と 位 置 づ け ら れ て い ま す 。 学 校 運 営 の 方 法 、 会 議 の ル ー ル 、 自 分 の 行 動 が ど の よ う な 影 響 を 与 え る か を 学 ぶ 内 容 と な っ て い ま す 。 "


" 「 若 者 の 参 画 を 、 単 に 若 者 用 に 席 を あ け る と い う 意 味 で 捉 え る な ら 、 そ れ は 見 世 物 と し て の 参 画 に す ぎ ま せ ん 。 若 者 が 、 参 加 す る 権 利 は あ っ て も 影 響 力 を 持 っ て い な い の は 、 実 際 の 力 を 与 え な い か ら で す 。 重 要 な こ と は 、 参 加 す る た め の 席 を 与 え る だ け で な く 、 社 会 に 対 す る 若 者 の 影 響 力 を 持 た せ る こ と で す 。 議 員 選 挙 で は た く さ ん の 若 者 候 補 者 が 当 選 し ま す が 、 多 く が そ こ を 去 っ て し ま い ま す 。 な ぜ な ら 、 彼 ら 自 身 で は 影 響 を 及 ぼ せ な い と 感 じ る か ら な の で す 。」 "


スウェーデンには中高生が投票できる学童投票(模擬投票)があります。国政選挙に先がけて実施され、数十万人の生徒が投票に参加します。国内の多くの学校が参加するイベントとして教育の一環に位置づけられていています。本物さながらの〝模擬〞選挙 は、全国レベルで集計され、その結果に関心が寄せられます。将来の社会を担う若者が今 の政治をどのように見ているのか、社会に対する大きなシグナルになっているからです "


" 世界的に見ても日本の若者の投票率は著しく低く、若者の不安定雇用の拡大や、年金制度の崩壊など、どれをとっても、特に若者たちの将来に深刻な影を投げかける問題であるにもかかわらず、積極的な発言や行動が見られる状況にはありません。むしろあきらめて、 社会から退行していく若者の数が多い状況 に、日本の深刻な問題があるのではないでしょうか。"


スウェーデンの取り組と比較して強く感じることは、日本の若者の政治離れは、家庭・ 学校・地域その他において、若者の社会への参画をなおざりにしてきたことと密接に関係 しているということです。若者が社会においていかなる影響力も持てない状況が、自信や自尊感情を奪い、無力感を生む原因となっているのではないでしょうか。"


" 義務教育段階から社会への参加を促し、身近な日常生活の中で声を発することを奨励し、大人たちがその声に耳を傾け、社会をよりよくするために活かそうとする社会になることが、子どもや若者を社会の担い手としてたくましく育てることにつながるのです。"


引用終わり