2015/05/23・24【ソーシャルワーク】 ソーシャルワークと心理学の出会い(前編)

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5月23・24日の二日間で

ダイレクト・ソーシャルワーク ハンドブック――対人支援の理論と技術出版記念セミナー「ソーシャルワークと心理学の出会い」というイベントに参加しました。

二日間で2000ページ近い本をみんなで読んでいこうというイベントです。これは、勉強合宿に近いですね…笑

この本はアメリカの大学院の授業で使われているソーシャルワークの教科書を、武蔵大学の武田信子先生監修のもとで翻訳されたものです。生物業界でいう「The CELL」ですな。

全部で19の章立てで、今回は参加者に前もって1章ずつ読んでプレゼンをするという課題が課されました。なんと、私も第5章をプレゼンさせていただきました。

以下にまとめを記します。

 

まず、初めての学問に触れる感じが何とも言えぬワクワク感でした。本は専門的な言葉はあるものの、決して難解ではありませんでした。一通り目を通して、赤鉛筆で線を引きならがら読んで、スライドをつくりました(上のファイルです)。時間がなくてどうなるかと思いましたが、何とか発表することができひと安心。

 

私の担当した第5章は「コニュニケーションの確立」というタイトル。

これは、ワーカーとクライエントが出会い、これから行われる面接を通じてクライエントが変化してくためのはじめの一歩について書かれた章です。とにかく、ワーカーとクライエントがしっかりコニュニケーションを取れるような人間関係の確立が必要で、そのためにはワーカーの力量が問われる、というのがこの章の背景。

 

では、具体的にどのような技術が必要なのか。前編では事細かに書かれていた内容をざっくりまとめてみます。

さらに、後編では学校の教員をワーカー、生徒をクライエントに置き換えて少し学校教育向けにアレンジしてみようと思います。

役割の明確化から始まり、共感的オーセンティシティアサーティブなコニュニケーションによって援助関係を促進してくという流れです。

 

まず、ワーカーとクライエントが初めて会い、面接をする際に必要なのが「役割の明確化」です。

この時のワーカーの仕事を私なりにまとめると

1.クライエントが持つ様々な誤解を解くこと

2.クライエントに心構えを持たせること

3.クライエントに誠意を伝えること

です。つまり、クライエントが変わっていくためにはそれぞれに役割があって、それを守れなければあまり良い効果がありませんよ。ということをクライエント自身にわかってもらうことですね。

以下はちょっと詳細

 問題を抱えたクライエントが何かを期待してワーカーの元へやってきたとき、その期待は非現実的なものの可能性があります。それに対して、ワーカーはクライエントにじっくり時間をかけて「その期待には答えられない」旨を説明します。つまり、クライエントとワーカーが潜在的に持っている齟齬を解消しなければならないのです。そのためには、ワーカーはクライエントの問題の本質を見極め、ワーカー側の対応の目的を説明できなければなりません。

そして、クライエントが何を期待しているのか、そこを見極める必要があります。

さらに、クライエントが変化していくためには面接中ではなく、面接外の時間の努力が必要であること、面接中は自身が率直であること、変化の際には様々な困難が待っていること、決定権は自分にあることなどを説明し、それ相応の心構えを持たせます。

そして、関わっていく中でのワーカーの対応はすべてクライエントのためであることを誠意をもって伝えます。


次に、援助関係の「促進条件」についてです。

ワーカーとクライエントが相互に理解し、ワーク関係の構築を促進するためには

共感的コミュニケーションオーセンティシティアサーティブな態度が必要であるということが説明されています。

 

ワーカーは面接の際に決してクライエントに積極的な助言をするわけではありあせん。あくまで、クライエントの様子から、適切な言葉を選び、クライエントの鏡になってあげる。助言というよりは、クライエントの言動から、感情を読み取り、返してあげるという作業ですね。これを共感的コミュニケーションとまとめています。様々な感情語を用いて、相手の感情を言葉で返してあげる。

レベルの低いワーカーは、クライエントの感情を正確に伝えることができず、逆に関係をこじらせることがあります。能力の高いワーカーはクライエントが感じている表層の感情よりもさらに奥底にある感情を返すことができます。これによって、クライエント自身の防衛的姿勢を取り除くことができ、相互理解を醸成できるということです。

 

また、オーセンティシティな態度もクライエントの壁を取り除くことができる一つの技術です。オーセンティシティとは、「自然で正直な、自発的で率直な、そして純粋な語りかたで自己を分かち合うこと」です。つまり、ワーカー自身が専門家のような振る舞いをせずに、自己開示をし、ありのままの姿勢でいることで、クライエントも安心感を得て、自己を表明できるというわけです。しかし、オーセンティシティの度が過ぎると、逆に相手を警戒させたり、信頼を失ったり、援助プロセスに効果がなくなってしまう点を中止しなければなりません。

 

また、時にはアサーティブな態度も必要です。アサーティブとは、攻撃的でも、受け身でも、欺瞞的でも、作為的でもない態度のことです(わかりにくいですね)。

私の解釈では「言わなければいけないところできっぱり言う」というイメージです。

例えば、援助プロセスの大切な場面で、横道に逸れそうになったり、クライエントによってワーカーに不都合なことが事態が起きそうになったりした時に、きっぱり相手に伝える発言や態度のことです(あってるかな?)。

効果的に援助関係を築くためには、時にはこのようなアサーティブな態度も必要であるということです。

 

様々なクライエントを相手にするわけですから、ソーシャルワーカーに必要なコニュニケーション能力はかなりのものだと思います。これは、テクニックとして身につけるにはかなりの訓練が必要です。何よりも大切なのは、その土台となるマインドだと思います。

ソーシャルワーカーだけでなく、人と関わるあらゆる仕事にこのようなスキルが必要に思います。もちろん学校の教員も。

後編では、今回学んだスキルを学校現場に置き換えてみようと思います。


今回は、「ソーシャルワークと心理学の出会い」というタイトルの会でしたが、私は両者の違いがわかりませんでした笑 

わからないけど、会全体の内容は自分の仕事には十分に活かせるものだったと思います。ソーシャルワークは「社会を変革すること」だと言っていました。なるほど。ミクローメゾーマクロまでいろいろな視点はありますが、全体としては社会を変えていく仕事なのですね。

 

ゆるい人との関わりの中から社会をより良くしていく。そんなイメージ。私もその一助を担えるよう、日々精進したいと思います。

以下、ハンドブックの監修者である武蔵大学 武田信子先生と監訳者の大阪府立大学 山野則子先生の本を紹介いたします。