科学的思考のトレーニング

ダウンロード
基礎科学1学期期末考査問題.pdf
PDFファイル 71.7 KB

考査が終わり、採点に追われていますが…アップします。(追われっぱなしなのだが)

基礎科学という学校設定科目ですが、科学的思考力でものごとについて掘り下げていけるような、簡単な探究活動ですね、それをやろうと思って色々やっています。考査問題、こんなのをつくりました。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

問題 以下の20の問いから5つを選択し、①仮説・自分の考えを提示し、②その根拠を得るための検証、解決方法を考え説明せよ。 (各10点) 

   なお、答案用紙には必ず、選択した問題番号を明示し、①と②をはっきり区別して答えること。


1.ホコリはどこから出てくるのか。

2.なぜ薬指と小指は一緒に動くのか。

3.いつきき手は決まるのか。

4.なぜ信号の無い高速道路で渋滞が起きるのか。

5.なぜ日本の夏は暑いのか。

6.なぜヒトからヒトが生まれるのか。

7.なぜ乗り物酔いするのか。

8.なぜヒトはおしゃれをするのか。

9.なぜ動物によって寿命がちがうのか。

10.なぜ他の動物と違いヒトは体毛が一部分にしかないのか。

11.なぜルールは守らなければいけないのか。

12.本当にウサギはさびしいと死ぬのか。

13.なぜ地球は回り続けるのか。

14.なぜ仕事のできが違うのに同じ給料なのか。

15.なぜ生き物を絶滅させてはいけないのか。

16.なぜ一般的にゴキブリは嫌われるのか。

17.なぜ人種によって身体能力に差があるのか。

18.山はどうやってできるのか。

19.なぜいじめが起きるのか。

20.頭の良さは遺伝するのか。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

この問いは、考査前に生徒のみなさんに

「なんでもいいから疑問をだして、それを考査問題にする」

と言い放ち、集まった400近い問いの中から、私がピックアップした20問です。

そこから、5問選んで答えてもらう。


疑問をだして、問いを立ててみようという時間。みんな楽しそうでした。おしゃべりしながら、いろんな愚痴もいいながらwいろいろ気づいたことが、やっぱりみんな生活するためにいろいろ考えている。出てくる問いが面白い。(みんなのギモン「【基礎科学】問いを立てるno.1〜200」「【基礎科学】問を立てる(no.201~400)」)

考査問題はあらかじめ教室掲示しました。いきなり問題出されて、時間内に答えられない人もいますし、調べたい人もいるでしょうから。そこは自由です。

掲示したら、一部の人から

「答え方の例はありませんか?」

と言われたので、自分も例題を立てて自分なりに答えてみました。自分で解答していてもやっぱり面白い。ちなみに、例題はこんな感じです。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

例題1 授業中、教える方が立って、教えてもらう方が座っているのは何で?

解答例

① 私は2つ理由があると考える。日本の学校は教室に黒板があり、授業中、教師はその黒板に文字

を書いて、生徒はそれをノートに写したり、メモしたりしていろいろなことを学ぶからである。もし、教師が

座っていたら、黒板に書ける範囲が限られるし、生徒が立っていたら、ノートに書く作業がやりにくいか

ら。もう一つは、教師と生徒一人一人がお互いの顔を見て授業ができるようにするため。話を伝えたり、

聞いたりするときに、お互いの顔が見えなかったら、情報が伝わりにくくなるかもしれない。つまり、授業

をするときに必要な文字と音での情報伝達をスムーズにするためにこの方法が最も効率がいいとされ

ているのだと考える。

② 例えば、4つクラスで全く同じ内容の授業を(1)教える方が立って、教えてもらう方が座る(従来型)。

(2)両者とも立ちっぱなしで授業をする。(3)両者とも座りっぱなしで授業をする。(4)教える方が座って、

教えてもらう方が立つ。の4パターンで行う。授業をした後で、テストをして、点数が高いクラスが一番

情報が良く伝わり、最も効率の良い方法であると言える。


例題2 男がスカートをはいたり、化粧したりしたら変なのに、女は普通なの?

例題2① スカートや化粧に限らず、多くの国で男と女の服装の違いが見られる。日本も昔、男は羽織袴(は

おりはかま)で女は着物を着ていた。つまり、男と女の服装を分ける文化が人間社会に存在しているよ

うである。自分が生まれて、ものごころついた頃には、人間は男女の差を区別できるようになり、男女

の服装に違いがあることも当たり前となっていた。当たり前な文化の中に、当たり前ではないことが存

在すると、人は違和感を感じる。この違和感が「変」という感覚である。だから、男が当たり前でないス

カートをはいたり、化粧をしたりすることを変と思うのである。

 ② 可能かどうかはさておき、男がスカートをはき、化粧をする人間社会をゼロから作ってみる。例えば、

ある家庭で毎日父親がスカートをはき、化粧をすれば、そこで育つ子どもはもしかしたら、それが「変」

とは思わないかもしれない。逆に、その子はスカートをはかず、化粧をしていない男を見て「変」と思う

かもしれない。スコットランドでは民族衣装に男もチェックのスカートをはく文化が存在する。それを見

た私ははじめは「変」と思ったが、スコットランドの男性は全く恥ずかしいとは思わないし、「変」とも思わ

ないのである。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

もちろん、正しい答えなんて求めていません。とにかく、自分の考えをアウトプットし、それを検証するための方法を考えてもらう。(検証方法について細かい説明はしていません。)


考査が終わって、みなさんに感想を聞いた所、「時間が足りなかった」という声が多数。これは、私のミスですね。時間配分を誤りました。それにしても、みんな良く書いている。

それと、やはり多かった感想が

「問題問いてて楽しかった」

です。みんな考えることが嫌いな訳ではないんですね。考査問題解いてて楽しいって、最高じゃないですか。


「知識はなくても考えることは出来る」


もちろん、知識が無い分、間違っていることはありますが、答えが正しいか間違っているかが最も大事だとは思いません。それはどこかで修正されるでしょう。どこかで。それよりも、普段考えたこともないようなことを深く掘り下げて考えてみる。それを、言語化してアウトプットする。これトレーニングしたら科学的思考も、言語能力も伸びる気がしますね。なんといっても楽しいって素晴らしいです。

この身近な問いに対する仮説、検証方法を考えるという一連の作業は、中学生でもできると思いますし、探究活動の導入にも良いのではないかと考えています。

初めから細かい形にこだわらず、まずは自由に書かせてみる。これを繰り返してだんだん形を洗練させていく。今回の考査をやってみて、そんなイメージが私の頭の中にできました。