アクティブ・ラーニングだけでいいのか?

 アクティブ・ラーニングは授業の方法として提示されています。主体的に学ぶ生徒の育成を目指しています。この手の話は私の周りでは大分議論され、教育の変革は喫緊の問題であることは良くわかりました。

 

 ただ、最近アクティブ・ラーニングを連呼しまくっていて、話が授業だけに焦点化しすぎている気がします。「とりあえずはそれで良い」のでしょうか…

 確かに、学校生活の大半は授業なので、大切なのは確かです。しかし、もっと広い視野で見たとき、アクティブ・ラーニングは学校全体の在り方にまで拡張することができるのではないかと思っています。主体的に生徒が学校全体の活動に関わるということです。

 

 これまでは高校生は政治活動が禁止されていました。それは、1968年に起こった全共闘の学生運動によって、高校閉鎖などが起こったためだと言われています。それ以来、高校生活と政治が切り離され、高校生から政治意識はほとんどなくなってしまいました。

 

 今新たに18歳選挙権により、高校生の政治活動が認められるようになりました。それに伴い、「主権者教育が活発に行われています。しかし、良く考えてみれば、そもそも学校のシステムは主権者を教育するためにできていたはず。それがないがしろにされてきたのです。その代表例が生徒会活動です。ウィキペディアには以下のように記されています

 

"生徒会(せいとかい)は、中等教育である中学校高等学校中等教育学校におかれる生徒による自発的、自治的な組織であり、学校における生徒の人権を守る重要な役割となっている。特別支援学校の中学部・高等部にも、中学校や高等学校に準じておかれる。

しかしながら日本における児童会や生徒会は、教師の指導の中で行なわれ、本来持つべきの児童生徒の人権を守る役割は、ほとんど果たしていないのが現状である。日本における生徒会の主な働きは、イベント計画実行を始め教師のいわゆる補助的な働き、つまり風紀を取り締まる役目となっており、海外の生徒会とは異なっているようである。"(引用終わり)

 

生徒による自発的、自治的な組織であり、学校における生徒の人権を守る重要な役割となっている。」

 自発的=主体的と考えれば、生徒会は生徒自身が主体的に生徒の人権を守る組織なのです生徒の生活基盤をなす学校を、生徒のみんなが幸せに生活できる場所にするために、その時代に合わせて改善していくのが生徒会なのだと思います。

  ウィキペディアにもあるように、今は一部の学校を除けば上記のような役割はほとんど果たせていません。 にもかかわらず、それとは別に主権者教育という名前で模擬投票などが行われている。自分に身近な問題を飛び越えて、国や自治体の政治なんてすぐには理解できないのではないでしょうか。少なくとも今の有り様では。ただただ「投票にいこう!」なんて呼びかけるのはやっぱりヘンです

 

 生活指導に必要だからといって、教師が勝手にルールを決め、押し付けることは、民主主義に反します。自分たちの生活は自分たちが決める。自分たちの生活がかかっているから、政治にも目が向く。それが政治参画のスタートではないかと考えます。

「あいつを国会議員にしたら、安倍政権の暴走が止まらないぞ。」って言うのは、

「あいつを生徒会長にしたら、教師の暴走が止められなくなるぞ。」とほぼ同義です。

そう考える生徒は少ないと思います。だって、生徒会長の選挙は自分の学校生活と何も関係ないですから。そもそも、生徒にとって学校というのは「出来上がった箱」なのです学校の在り方から生徒の在り方が決まってしまうのは順番が違うように思います。

 

 教師は生徒の人権をちゃんと理解しなければなりません。日本は子どもの権利条約を批准しています。世界的に「日本は子どもを大切にしていますよ」と発信しているのです。

 

 しかし、学校の内実は教師の独裁政治に近いものです。暴走している。しかし、教師側にもほとんど自覚はない。生徒たちに生徒会の制度がなぜあるのかを前もって知らせる必要があると思います。「自分たちに学校を変える権利がある」ことを教えてあげなければ。自分たちが学校を変えられると思えば自分ごととして生徒会選挙だってできるはず。

 

「子どもたちには無理」

 

 多くの教師から聞こえてきそうです。

 子どもたちはもちろん大人ほど判断能力はないかもしれません(この仮説も実際のところ分かりません)。でも、無理かどうかはまずやってみなければ。そして、教師の前で失敗しまくれば良いんです。「判断能力が無い」のは、判断力を育む環境が無かったからかもしれませんから。

 

 脳科学によって、子どもの脳の発達が解明されつつあるようです。しかし、どんなに脳科学で解明されようと、現代の学校システムの中で育つ子どもの脳しか調べることはできませんし、脳の発達には環境など様々な要因が絡んでいるはずですので一般化されにくいと思います。

 

 アクティブ・ラーニングだけにとらわれないようにしたいです。授業だけにとらわれている教師が気付かない限り、いつまでも主体性をもつ生徒など育たないのではないでしょうか。

 その辺、文科省はどう考えているのか気になるところです。

 

 一方で、高校生が自発的に様々な活動に取り組む動きも見られます。このような動きが校内外問わず広がっていけば良いと思いますが、今回の法改正によって、高校生の政治活動が許されるようになったにも関わらず、「届出制」などの規制によって管理するような動きもあるようです。

 生徒のうちに秘めた平和に対する思いをつぶさないためにも、また、自発的、主体的に活動し広がりを見せている取組みの邪魔をしないように、私たち教師は環境の整備をしなければ。